第一章 君主政体にはどれほどの種類があるか、また、獲得されるか
全ての政体は、すなわち昔から今まで人々の上に政治権力を行使してきた
全ての支配権は、昔も今も共和政かさもなければ君主政である。
君主政体の種類
①支配者の血筋として長い間君主として続いてきた世襲の政体。
②振興の政体。(世襲政体が新たに獲得した支配地の政体を含む。)
②の振興の政体ができる支配地は、それまで君主の下で暮らすことに馴らされてきたか、
さもなければ自由であることに慣れてきたかであり、また、
獲得した際は、他者の軍備によったかさもなければ、自己の軍備によったか、
運命か力量のためである。
②よりも①の方がこれを保持する時の困難は少ない。
先祖伝来の統治形態を等閑にしないだけでよく、後は予測できない
変事に対しては、ただ適当に時を稼いでいれば良いのだから。
そうすれば、君主が並の器量の者であっても、よほどの強大な
権力が現れて彼から権力を奪おうとしない限り、己の政体のうちに留まることができるだろうし、
たとえ権力を奪われても、その簒奪者の身に不吉な影が忍び寄れば、それを取り戻せるから。
イタリアのフェッツェーラ公は支配地の中で君主としての家柄が古くから
続いてきたという理由によってのみ、1484年のヴェネツィアの攻撃に耐え
1510年の教皇ユリウスの攻略をも凌いだのである。
何故ならば生まれながらの君主は新しく君主になった者に比べて人を害する理由も
必要もあまりないから、それ故に一層人から愛されるようになる。
また、よほどの悪癖でもあって恨みを買わない限り、臣民に慕われるのは
自然の成り行きである。そして、また、支配権が古くから連綿と続く中では、
改革の記憶も理由も消えてしまう。何故ならば、1つの変革が次の変革を
構築するための噛ませ石を残していくから。